休校中の子どもたちに贈る「こんなときだからこそ伝えたいこと」⑤

「休校中の子どもたちを何かで元気づけられないか?
 不安を和らげてあげられないか?」
そんなふうに、いろいろと考えてくださった結果、作家の瀧澤中さんが
「人間力メルマガ」にて、特別にこんな記事を寄稿してくださることとなりました。
その最後です。(全5回)
※今回は5回の中でも特に読んで欲しい内容です。
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森繁久彌(もりしげ ひさや)という俳優さんがいました。
彼は、こんなことを息子さんに質問します。

「広場でたくさん人がいたとする。
そこにお前がまぎれ込んで、どちらの方向が空いているのか、
自分が行きたい方向がどちらなのかわからない。
こんな時、お前ならどうする?」

息子さんは、「皆の行く方向についていく」、と答えます。
 森繁さんは、こう教えます。

「いいか。もしそこに、みかん箱が一つあったとして、
それに乗れば頭一つ上に出るだろ。するとよく見えるな。

どの方向が混んでいて、どっちが空いているか、行くべき方向がよく見える。
そのみかん箱が『知識』というものだ」

知識があれば、行くべき方向が見える・・・。

よく、「広い視野を持ちなさい」と言われることがありますね。
「広い視野」を持つには、少しだけ高いところからものごとを見渡せばいいんです。

箱ひとつ分高い場所からものごとを見れば視野は広がり、進むべき道が見えてくるのです。
その箱が、知識です。

では知識は、どうやって得ればよいのでしょう。

もっとも簡単で、時間も場所も限定されない方法が、読書です。

なぜ、読書がいいのか。
まず。行ったこともない場所に、連れて行ってくれます。

「(アマゾン)河の水がひくと、場所によってはあちこちに沼の残るところがある。
 こういう沼やアニンガ(水草)の生えたところをシャベルで掘りおこすと、
泥の中から30〜50センチくらいの大きさの化石のようなよろいをきた魚がたくさん獲れる。
化石にしては動くので気味が悪い」(『アマゾン河』神田錬蔵)

ほかにも、馬をのみこむ蛇の話や、船を走らせているだけで、
魚が船に飛び込んでくる話などが、書かれています。
もちろん、実話。
アマゾンで七年間過ごした、日本人医師が書いています。
この本はとても読みやすいので、チャレンジしてみてはいかがでしょう。

それから。
読書は会ったことのない人に、会えます。

「(織田信長は対談するとき)だらだらした前置きを嫌い、
 また、身分の低い人とも親しく話をした」
「誰であろうと、武器を持って信長の前に出ることは許されなかった」
「(豊臣秀吉は)優秀な騎士であり、戦いに熟練していたが、気品に欠けていた」
(『完訳フロイス日本史』より一部意訳)
戦国時代、日本にやってきた宣教師が実際に見聞きした、織田信長や豊臣秀吉の様子です。

行ったことのない場所に行き、会ったことのない過去の人や、未来にも行くことができる。
これが、読書です。
そして、こういう読書を通して、知識を得ます。

どうです?楽しいでしょう?

さらに。活字の本には、知識習得以外にすごい効果があります。

それは、想像力を持てる、ということです。

川端康成の小説、『伊豆の踊子』。
ヒロインの踊り子の名は、薫(かおる)。

もしドラマや映画なら、薫(かおる)は若き日の吉永小百合さんとか、
美しい女優が演じますから、役者さんのイメージになります。

漫画やアニメでも、そうですね。

でも、活字の本なら、あなただけの薫(かおる)を想像できる。
あなただけの主人公(学生)を想像できる。

活字の本は、人物や風景を自由に想像することができます。
これは、あなただけが、見ることのできるものなんですよ。

さらに。あなただけの情景の中で、なぜ薫(かおる)は主人公に好意を寄せたのか、
主人公は、薫のどんなところを好きになったのか、
その切ない気持ちを感じることが出来る。

私は主に、歴史のことを本に書いています。
歴史を見ていると、想像力が欠けたために失敗をおかすことが
とても多いのに気がつきます。

もしこんなことをすれば、相手はどう思うのか。
その結果、どんなことが起きるのか。

相手の気持ちをろくに考えもせず、相手の実力を小さく見て、大失敗するのです。

逆に、想像力があったから、素晴らしいものを発明したり、
人の気持ちがわかるから、人に優しくできて、おかげで友だちをたくさん持つことができる。

読書によって、正しい知識と、豊かな想像力を得れば、人生は本当に豊かになります。

1つ、大事なことを忘れていました。
昨日の、宿題。

将来あなたは、どんな人になっているのでしょうか。
それを予測する方法があります。

「未来を予測する最良の方法」。
あなたの答えはなんでしょう。

答え。

「未来を予測する最良の方法は、未来を自分でつくることだ」
(エイブラハム・リンカーン)

そう。知識と想像力を使って、自分の未来を、自分の手でつくっていく。
あなたの未来をつくるのは、お父さんやお母さん、学校の先生ではありません。
あなた自身が、あなた自身の力であなたの未来をつくるのです。

そして、あなた以外の人の幸福な未来もつくることができるのです。
それはつらいことではなく、楽しいことです。

知識と想像力さえあれば、どんな未来でも自由に描けるのですから。

さて。
1日目は、「自分以外の世の中のために」と思えば、時間のムダが省けることを。
2日目は、どうしたら「自分以外の世の中のために」なんて気持ちになれるのか、
 それは、「善い心」の選択をすればよいのですよ、と申しました。
3日目は、人が困ったときに、困ったことに便乗しない。
 「善い心」を発動してほしいと。
4日目は、失敗してもいい。ミスをしない人は何もしない人だ、という話でした。
 そして成功のひけつは「最後の5分間のふんばり」と、述べました。
そして5日目。広い視野を持つため、知識という名のミカン箱を持つこと。
 それから想像力を持つこと。

この2つを実現するもっとも容易な方法として、読書を紹介しました。

どこからでもいい。まずは、この中の何かを、やりはじめませんか。

その結果、みなさんの未来と、わたしたちの国、日本の未来が、
希望に満ちたものになりますよう、願ってやみません。

5日間、読んでいただき、本当に、ありがとうございました。

生徒のみなさん、学生のみなさん。
心から応援しています!!

瀧澤 中

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