致知出版の 「人間力メルマガ」(2019.5.10)から紹介します。
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音読の効果が出るのは「7回目」から

音読などを取り入れた陰山メソッドで知られる陰山英男先生。
NHK Eテレ『にほんごであそぼ』の総合指導などを務める齋藤孝先生。
「陰山メソッド」「齋藤メソッド」といわれる独自の教育法の中で、
ともに重視されているのが音読の実践と、その学習効果についてです。
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【齋藤】
私の経験からしても、やはり音読はいいですね。

以前子供たちを二百人くらい集めて音読する、といったことをよくやっていましたが、
先生が先導する復唱方式でやった場合、『坊っちゃん』は一冊通しで六時間くらいで音読できます。

この時、大切なのは先生のリズムに合わせることで、
意味の纏まりごとにイントネーションをつけながら読むと、
意味がよく伝わるんです。

学力はバラバラでも、音読ができると子供たちは誰でも自信を持つようになります。

優れた教育法として、音読がなぜ江戸時代から伝わってきのか。
そのことの意味を改めて考えさせられますね。

例えば、宮澤賢治の『永訣の朝』にしても、音読をして解説をして、また音読をして解説をする。
そうやって七、八回音読を繰り返すと、子供たちは次第に暗誦できるようになります。

最終的に大事なのは自然に暗誦してしまうまで導いてあげることで、
無理矢理知識を詰め込む教育法とは違って、最も弊害が少なくていいのではないかと考えています。

【陰山】
いや、いま齋藤先生は七回、八回とおっしゃったじゃないですか。
さすがに現場を踏んでいらっしゃるなと、とても感心しました。
僕の経験から考えても、力が出る反復回数はやはり七回からなんです。
結果を出している教師は皆、口を揃えたかのように「七回」と言います。
三回、四回、五回の反復ではまず結果が出せない。

【齋藤】
一時間あれば、七回は反復できますよね。

『平家物語』の「那須与一」でも「敦盛の最期」でもいいのですが、
状況を説明した後に読んで、また読んでということを一時間繰り返すと、
子供たちは次第にその日本語に慣れてきて「この言葉はかっこいい」などと感じるようになります。

音読の後で「現代語訳と原文と、どちらが日本語としていいか、
好きなほうに手を挙げて」と聞くと、百%原文なんです。

それが日本語の格の違いということなのかもしれませんね。

徹底練習は七回、八回とやり続けた時に、ようやく染み込んでくるわけですが、
反対に「確信を持ってそこまでやらなくては身につかない」という言い方もできるでしょう。

【陰山】
反復は中途半端にやるから嫌われるんですよ。
反復のよさを体感する前に、子供たちから「まだやるの?」と言われて教師はそこでやめてしまう。

反復学習に悪いイメージがついてしまう。

しかし、成果が出るのは、ただの反復ではなく徹底反復、具体的には七回以上繰り返した後なんです。

 【齋藤】
武道にも、稽古を反復することで質が変化するという考えがありますね。

生クリームは最初は液体です。
ところが、材料の液体を掻き混ぜていると、それが突然固体に変わる。
これは永遠に液体なんじゃないかと思っても根気強く混ぜ続けていると、ある瞬間に生クリームになるんですね。

音読も武道もこれと同じで、質的な変化を起こそうと思ったら、量的な反復がどうしても必要なんです。

第一、「必ず生クリームになる」と確信を持ってやっていないと、やってられないですよね(笑)。

【陰山】
僕も言っています。「信じる者は救われる」って(笑)。

いま齋藤先生がおっしゃった「続けていると突然変わる」というのは、
ものすごく重要なポイントで、僕はこれを「突き抜け」と言っています。

「百ます計算」でも「音読ドリル」でも、「この子は無理だな」と思っていた子が、
ある日、パーンと弾けたようにできるようになるんです。

そこまではその子の可能性や自分の指導を信じるしかないわけですが、
ありがたいことにご利益は生きている間に出ますから(笑)。

【齋藤】
徹底反復で無意識でそれができるようになると、他のことに意識が使えるようになります。
つまり、注意深くなってミスが減るんですね。

スポーツで言えば徹底反復していない人は目の前のボールだけに目を奪われて周りが見えず、試合ではボロ負けしてしまう。

いまの教科書は、現在の子供たちの能力をもってすると簡単すぎて
徹底反復には堪えられないというのが私の率直な感想です。

昭和三十年代、四十年代と違っていまの子供たちは、いろいろな言語を吸収して小学校に上がるわけですから、
中身のない文章ばかりでは、子供たちを軽く見ているとしか思えません。

どの教科書も文字数が知れていて、その気になったら数時間あれば一冊を覚えてしまいます。

練習メニューのレベルが低いと、先生方もどうしてもレベルの低い教え方になってしまう。

そう考えると非常に残念ですね。

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生徒のみなさん、特に英語、国語の音読は大切ですよ。
恥ずかしがったり、めんどくさがったりしないでやってみてください。
だって、江戸時代の勉強方法は音読だけだったのですから。
そのような時代でも学問で後世でも偉人と評価された人は
みんな音読を頑張っていたのですから。

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