志賀内泰弘さんの第1回「親孝行大賞」コンテスト」から紹介します。
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『オヤコウコウの意味』

「オヤコウコウってなあに?」
あれは僕がまだ小学生の時だ。
ふいに僕は母に尋ねた。
母ははっきり答えた。

「あなたが生きていることよ」

僕はその言葉の意味を深く考えなかった。
だけどやがてその意味がわかる時がきた。

あれは僕が二十歳の時だった。
就活中の僕は50社受けて、ひとつも内定をもらえずにいた。
毎日届く不採用通知。
一気に十社から来た日にはもう死すら過った。
いらない人間。
そう言われてるみたいだった。

 結局、働かずそのまま引きこもりになった。
初任給で親を旅行に連れていく友達もいた。
マッサージチェアを贈る奴もいた。
母の日に花束を抱えて帰る奴だって。
そんな友達を見ては自分が親不孝だと思った。
働かないし花も買えない。
旅行に連れ出す金も気力もない。
いっそ死んだら楽になるのに。
そう思った。
だけど、母は言った。

「生きてさえいればいい」

今も昔も変わらぬやさしさがそこにはあった。
確かに生きることは難しい。
毎日思うようにいかないことだらけ。
右往左往する日も、四苦八苦する日もある。
だけど生きていればいいことがある。
母のやさしさはそれを教えてくれた。

暗い引きこもりの時代も五年で終わった。
長くも辛い、そんな旅だった。
だけど長いトンネルも終わりがちゃんとあった。

今では「早く働け」と言わなかった母に感謝しかない。
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お互いに、ずっと親孝行をしましょう。
まず、親より長生きすることでしょうね。

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