ほろほろ通信 志賀内泰弘さんのギブ&ギブメルマガから紹介します。
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 『キク農家の父の苦労を知って』

田原市の河合佑典さん(26)が高校生のときの話。
3年間、野球部に所属していたが、父親は一度も試合を見に来てくれなかったという。
部員の仲間は両親がそろって応援に来るのが当たり前のようになっていて、自分だけ寂しい思いをしていた。 

ある日「何で見に来んの。仕事がそんなに大事なの」とひどい言葉をぶつけてしまった。
それがきっかけで、父親とはほとんど会話をしなくなってしまった。 

3年生の1月に「卒部式」という引退セレモニーがあり、監督やコーチ、下級生、それぞれの部員の両親が参加する。
部員から感謝の気持ちを述べるとともに、下級生や親たちのチームと交流試合をする。 

このとき、初めて佑典さんの両親がそろって来てくれた。

その帰りの車中で、父親が真っ赤な目をして涙をこらえながらつぶやいたという。
「試合は見に行ってやれなかったけど、けがをせず3年間よくやってくれた。お疲れさま」 

突然の言葉に、佑典さんは罪悪感もあり涙があふれてきた。 

現在、佑典さんは家業の農業を手伝っている。
電照菊の栽培だ。出荷時期は年3回。
数ある温室では少しずつ開花時期がずらしてあるので、ほとんど年中休みが取れない。

冬はキクの病気、夏は水不足で目が離せない。
繁忙時は朝5時から夜9時頃まで働く。
家族は花の生育に合せての生活になる。 

「今になって、父親が野球の応援に来られなかった事情もよく理解できます。
思い返すと、幼いころに父親とキャッチボールをしたのが野球を始めるきっかけでした。
五体満足の体をもらい、恵まれた環境で育ててくれた両親に感謝しています」と佑典さんは話す。 

<中日新聞掲載 2014年3月9日>

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