志賀内泰弘さんのギブ&ギブメルマガから紹介します。
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 『昔からある風景』

私は母子家庭で育ち、早くから台所に立って、料理を教わっていました。
幼少期はつま先立ちで覗きながら、小学校でお茶碗洗いを任せられ、一通りの料理は中学生で出来るようになりました。

女手一つで育ててくれた母。仕事で帰宅が遅い日はご飯を作って待つのが日課。
美味しいね、と褒めてくれる母に料理を作るのが大好きでした。

それがキッカケで調理師の道へ進みました。 

あれから10年、私も家庭を持ち子供が出来てしばらく会えていない母を自宅へ招待しました。
久しぶりに母と台所場に……あの頃より小さくなった母を横目に、シワシワの手におぼつかない包丁さばき。
味付けはもう自信がないの、と私に任せ、あの頃とは立つ場所さえも違う。 

隣で洗い物を片す母に淋しさを感じてしまいました。

味見してみて、と母が私の料理を食べてひとこと。
「…しっかりと、私の味付けだね」

そうだよ。卵焼きは甘かったでしょう。
煮物は少し薄目だけど魚だけは甘辛くて。

普段は分からなかった。 
あの頃隣で見上げてた母はもう居なくて私の料理を頷きながら食べている。

あと何回こうやって食卓を囲めるだろう、母に美味しいと喜んでもらえるかな。
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母の味付け。
覚えていますか。

できれば次の世代に受け継ぎたいですね。

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