致知出版社の「偉人メルマガ」から紹介します。
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「ぼくの10年先を見とれ!」

 私が中学校の校長をやっていた時、卒業生がお正月に帰ってきて同窓会をやりました。
 今、どんなことを考えながら、どんな仕事を頑張っているかという自己紹介を順番にやったんです。

 その時、一人の青年が、「僕は中学在学中は、勉強はできず、
わからんことがあっても質問もできんつまらん生徒でした。
 勉強ができんから進学できん、個人商店に就職したんですが、
 その店に、僕と同い年の娘さんがおるんです。

 その娘さんが、『この靴磨いといて』靴磨きをいいつける。
 靴ぐらいは磨きますが、その娘さんのシャツや下着の洗たくさせてもらいながら、
男に生まれて、同い年の娘さんのこんなもんまで洗わんならんかと思うと、
 無念で無念で涙があふれてしょうがありませんでした。

 ところが、涙で霞んだまぶたの向こうに、兵庫県の山奥で、貧乏な百姓をやっている
両親の姿が浮かんだとたん、『これぐらいのことでくじけるか、下着洗わしてみい。くじけんぞ』
 思ったとたん、微笑みを取り戻すことができました。
 皆さん、僕の10年先を見てください」という自己紹介をやりましたね。

 皆しゅんとしました。

 結局、道にいい道、悪い道というのがあるのではない。
その道を、どんなふうに生きるかという、その生きざまによって、
良く見える道も悪くなったり、悪く見える道も良くなったりするんですね。

結局「僕の10年先を見とれ!」ということにならんと、人間はものにならんということです。

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