月刊『致知』より太田誠(駒澤大学野球部監督<当時>)氏の話を紹介します。
 —————————————-
【中畑清さんに学ぶ、明るい環境のつくり方】

私が駒澤大学野球部監督に就任して間もない頃のことである。
大勢いる部員の中に、こいつはどこか人と違う挨拶の仕方をするな、という選手がいた。
後に読売ジャイアンツに入団し、「絶好調男」の愛称で人気者になった中畑清である。
当時の彼は、率直に言って田舎からそのまま出てきたような垢抜けない顔をしていたが、
声だけは人一倍でかく、何よりも人懐っこい性格をしていた。
まるで見知らぬ人と会っても平気で話をするし、お年寄りにも実に自然に声をかける。
言葉というものには、これくらい「心」が表れていなければ駄目だと感じたのは、おそらく中畑と出会ってからのことになるだろう。
            * *
彼のしていた挨拶とは次のようなものだった。
例えば誰かに「こんにちは」と声をかける。
普通ならこれでお終いだが、中畑は必ずその後に
「きょうはいい天気ですね」とか「おばあちゃん、いつも元気ですね」
といった“もう一言”の挨拶を付け加えるのだ。
私はこれを「二言(にげん)挨拶」と名付け、普段の挨拶をただの挨拶に終わらせないよう心がけてきた。
この「二言」は、必ずしも言葉である必要はない。
すれ違った相手のために立ち止まっても二言。
手振りや微笑であってもいい。
上級生のほうから「おはよう。きょうも元気にいこうぜ」
なんて声をかければなおのことよし。
そこに人間同士の心と心の通い合いが生まれてくるのだ。

  「二言挨拶」をしてみませんか?     

              (2006年3月号より) 

校内連絡