致知出版社のメルマガから紹介します。
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長年、多くの人の悩みに寄り添ってきた文学博士・鈴木秀子さん。
月刊誌「致知」では『人生を照らす言葉』を長期連載していただき、多くの感動の声が寄せられています。
本日はその人気連載より、心温まるお話をご紹介します。
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人生を変えた父の一言

(鈴木)
これは私の知人の話ですが、彼女は若い頃から
「あなたはとても明るい人ですね」と周囲に言われていました。

学校の成績は決して優秀とは言えず、これといった特技があるわけでもないのに、
いつもたくさんの友達に恵まれていました。

「自分はどうしてこんなに誰に対しても素直に心を開くことができるのだろうか」
と考えていた時に、ふと思い出したのが幼少期の頃の出来事でした。

彼女には、大変勉強ができる兄がいました。
そんな兄を父親はとても可愛がっていたので、
彼女はやっかみや反発心もあって勉強をしなくなり、いつの間にか成績も下がっていきました。

ある日、彼女は父が家で兄を叱責する声を耳にします。
障子越しに聞いた父の話はこのようなものでした。

「おまえは自分が勉強ができるからといって、妹と比較しては駄目だ。
あの子にはあの子のよさがある。考えてみなさい。
あの子がそこにいるだけで、周りは皆ホッとするだろう。

おまえが勉強ができるのは、それはそれでいいことだけれども、
あの子は誰も持っていない素晴らしさを持っているんだ。
そのよさを大切にしてあげなさい」

これを聞いていた彼女が心打たれたことは言うまでもありません。 

「ああ、お父さんはそんな思いで見てくれていたんだ。
頭が悪いと言って切り捨てていたわけではなかった。
自分で勝手に駄目だと決めつけていただけだったんだ」

その出来事以降、彼女は自分を誰かと比較することはなくなり、
神様が与えてくれた自分のよさを素直に受け入れることができるようになったと話していました。

このように、私たちは自分を支えてくれる大きな温かさに包まれていながらも、
勝手な思い込みや固定観念によって、なかなかそのことに気づくことができません。

そしてそれは親子などの関係に留まりません。
誰もが大いなる存在に抱かれながらも、多くの人たちはそれを自覚しないまま生きているのです。

(※本記事は月刊『致知』2023年3月号
連載「人生を照らす言葉」より一部抜粋・編集したものです)

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