「座右の寓話」から紹介します。
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こぶで有難い

 昔、有難屋吉兵衛という男がいた。
この男、すこぶる楽天家であり、
かつて不平不満を言ったことがなかった。
 その吉兵衛がある日、急いで外出しようとしたところ
鴨居(かもい)に頭をぶつけ、饅頭(まんじゅう)のようなこぶをつくった。
しかし、痛いとも言わず、両手でこぶをおさえながら
「有り難い、有難い」と感謝するばかりであった。
 これを見ていた隣人はあやしんで尋ねた。
「吉兵衛さん、あんたはこぶができるほどのケガをしながら、何が有難いのじゃ」
 吉兵衛さんは答えた。
「有難いですよ。頭が割れても仕方がないのに、
こぶぐらいで済んだんですから。実にありがたいと思います。」
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痛くて仕方がないにもかかわらず。
無理に我慢して、平気を装っているだけともいえる。
しかし、自身におきた小さな不運にいつまでもとらわれていても、痛みが和らぐわけではない。
いまいましさがこみ上げ、かえって痛みが増すのがおちである。
それよりも、その程度でことがすんだ幸運をかみしめる方がよほど生産的だろう。
 こんなユダヤ人ジョークがある。
「ユダヤ人は足を折っても、片足でよかったと思い、
両足を折っても、首でなくてよかったと思う。
首を折れば、もう何も心配することはない。」
 失ったものを数えるな。残っているものを数えよ。
そして、残っているものがあることを感謝し、
それを最大限に生かそう。
これは真実である。

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