「座右の寓話(ぐうわ)」から紹介します。
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 1879年のある日、ルイ・パスツール(フランスの生化学者)は
三か月のバカンスから戻ってきて、休み前にしていた実験を再開した。
 通常、新鮮なコレラ菌の培養液を注射されたニワトリは24時間
以内に必ず死ぬ。ところが、三か月間そのまま放置された培養液を
ニワトリに注射したところ、ニワトリは病気にはならず、ピンピン
していた。コレラ菌の培養液がなぜそのまま放置されていたのか。
「細菌を短期間ごとに植え継ぐ」というパスツールの指示を助手が
怠っていたのだ。

 助手のさぼりによって、実験は失敗に終わったように思えた。
 しかし、パスツールはこの失敗のもたらした幸運を見逃さなかった。
彼は新鮮な培養液をそのニワトリに注射したのだ。そうすると、
ニワトリは病気になることなくピンピンしていた。パスツールは
偶然訪れた機会を創造的にとらえることに成功した。
 彼は弱くなった細菌の培養液を使って、ニワトリに免疫をつける
ことに成功したのだ。
 こうして新しい事実が導かれた。
「減弱された微生物は病気を起こさない。
それは免疫を与え、ワクチンとなりうる。」

 ここで紹介した逸話で明らかなように、幸運な偶然の出来事という
だけでは発見には結びつかない。
 幸運な出来事をつかむ人は、聡明さのある人だ。
それがない人は幸運な出来事を取り逃がしてしまう。
 聡明さと同時に大事なのは、想像的な広い心である。大発見をする
人は、A点からB点に理詰めでコツコツ進むような人物ではない。
 Xを探している時に、偶然に「何かわからない」Yにぶつかったと
する。何かわからないからといってそのYを打ち捨てずに、粘り強く
Xとの関係性を考えるような人である。閉鎖的ではなく開放的で広がり
のある知性を持った人だ。
 
 この逸話の教訓は次の通り。
自分にとって大切なものを探しているときに、探しているものとは
別の価値あるものを偶然に見つけれらることがある。
ただし、それは偶然の出来事を見逃さない「聡明さ」と「創造的な
広い心」を持っていることが前提条件となる。
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このような「偶然の出来事がもたらす幸運な展開」を
セレンディピティ」と言います。
私もこのセレンディピティをつかみ取れるような人になりたいものです。

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