フランスのノーベル賞作家のアナトール・フランスの随想録である『エピクロスの園』に、こんな話があります。
それは「人と精」という寓話(ぐうわ)です。

 ある精が一人の子供に一つの糸毬(いとまり)を与えていう。
「この糸はおまえの一生の日々の糸だ。これを取るがよい。時間がおまえのために流れてほしいと思う時には、糸を引っぱるのだ。糸毬を早く繰るか永くかかって繰るかによって、おまえの一生の日々は急速にも緩慢にも過ぎてゆくだろう。糸に手を触れない限りは、お前は生涯の同じ時刻にとどまっているだろう。」
 子供はその糸を取った。
 そしてまず、大人になるために。それから愛する婚約者と結婚するために。
 それから子供たちが大きくなるのを見たり、職や利得や名誉を手に入れたり、心配事から早く解放されたり、
 悲しみや、年齢とともにやって来た病気を避けたりするために。
 そして、最後に、かなしいかな、厄介な老年に止めを刺すために、糸を引っぱった。
 その結果は、子供は精の訪れを受けて以来、四か月と六日しか生きていなかったという。
 (大塚幸男訳、岩波文庫)

 私にとって、この文章で『時』の大切さを感じました。
 自分の都合のいいことだけを体験しようとすると人生がこんなにも味気なくなるのかと。
 そして、「どんなに苦しいことも、つらいこともじっくり味わう。」こともありかなと感じました。

 あなたはこの寓話(ぐうわ)を読んで、何を感じましたか。
 

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