月刊誌『致知』2017年12月号「人生を照らす言葉」から紹介します。
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 私の知人に、大きな家に住んで豊かな暮らしをしていた女性がいます。
 ところが、ご主人が経営する会社が倒産して、家庭内の家具や電化製品は差し押さえられ、地方にある小さな一軒家に引っ越すことになってしまいます。
このご夫婦を苦境から救ったのは幼い一人娘でした。

 その子は引っ越した後、「家の中が全部見える」と言って無邪気に走り回ったり、
勉強している姿をいつも母親が台所で見てくれていることを喜んだり、
家族が一緒に川の字になって眠れると言ってはしゃいだり、
倒産という出来事が嘘ではなかったかと思うくらい、小さな一軒家での生活を楽しんでいたのです。

 過労のためか、ご主人は早くに亡くなってしまいますが、
 彼女が女手一つで子供を育てる苦労を乗り越えさせてくれたのもまた、
女の子の屈託のない笑顔でした。

 一人娘が成長して大学進学が決まり、いよいよ上京するという時、
母親はその子を呼んで、これまでの出来事を振り返りながら静かに話しました。

「会社が倒産した時、本当はお父さんと二人、死んでしまいたいと思っていたの。
 そんな時でも、いつもあなたは笑っていた。
 あなたが喜ぶ度に、お母さんも一つひとつ目が開かれていった。
 それまでは贅沢な暮らしができることが幸せだと思っていたの。

  しかし、そうではないことをあなたは私に教えてくれた。
 いままで私が生きてこられたのは、あなたがいてくれたおかげです。」

  そして,「日本には清貧という言葉があるけれども、あなたにはどんなに苦しくても
 そこに素晴らしさを見つける力がある。その力をこれからも伸ばしていきなさい。」
 という言葉を餞(はなむけ)に贈ります。

  我が子の何気ない振る舞いによって、彼女は人間の本当の幸せに目覚めたのです。
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  あなたは本当の幸せとは何だと思いますか?

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