経営の神様といわれた松下幸之助さんのもとで経営だけではなく、
人間を育てる考え方を学んだ上甲さんの話を紹介します。
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「人間の勉強をしいや」松下幸之助のこの言葉が、京都大学を出て、松下電器(現パナソニック)に入社した
上甲晃(じょうこう・あきら)さんが受けた一連のカルチャーショックの始まりでした。

  初めの半年間は、町の電気店で店員として働きましたが、いくら学歴を誇っていても、テレビは一台も売れません。
なぜか。社内研修で松下幸之助からこう教わって、目からウロコが落ちたのです。
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知識を頭に詰め込むことだけが、勉強ではないんやで。
知識を否定するわけやないけど、その知識は、全部道具や。
使うあんた方自身が、人間として立派になってこんと、どんなにいい道具を持っておっても絶対に実社会では通用しない。
だから、人間の勉強をしいや。
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「学問と実社会で必要とされる学びは全く違うーー。
この気づきは、私が今日まで一貫して持ち続けている基本姿勢です」と上甲さんは語っています。

 上甲さんはその後、松下政経塾の二代目塾頭として、松下幸之助の「人づくり」を徹底して学び、
54歳で辞してからは、志の高い日本人を育成する「青年塾」を立ち上げました。
 
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何事も「ハイ喜んで」 

 上甲さんの青年塾では、いくつかの合い言葉で、人間としての姿勢を伝えています。
最初に生まれた合い言葉が、「ハイ喜んで」でした。
特別なことができなくともよい、人から何かを頼まれた際には、必ず「ハイ喜んで」と返事をする。
それを継続していると、運命が変わってくると氏は言います。

 それもそうでしょう。
同じことをやるにしても、いやいや、やっていたら、いかに手抜きをしようか、という意識になってしまいます。
「ハイ喜んで」と言葉を出すことで、自分が主体的に取り組む意識が生まれてきて、
そこから、どうしたら依頼した人が喜んでくれるだろうか、
あるいは、その人の期待以上のことをするには、どうしたら良いか、と考えます。

 そういう意識で物事に取り組めば、自分の実力も次第に向上していきますし、
周囲の信頼感も育って、活躍できる舞台も広がっていくでしょう。
こうして「ハイ喜んで」と答えているうちに、運命は良い方向に変わっていくのです。

 ただ、それも一回や二回ではなく、継続しなくてはなりません。
松下幸之助は「素直の初段になるには30年かかった」とよく口にしていたそうです。 

 囲碁でも将棋でも一万回指すとたいてい初段になれるそうです。
とすれば、「ハイ喜んで」を1日1回、1年間365回を30年続ければ、一万回に達して、松下幸之助級の初段になれるということです。
そこまでいかなくとも、まずは3年、千日続けてみたらどうでしょうか?

  宮本武蔵は「千日の稽古を鍛とし、万日の稽古を練とす」と言ったそうです。
人間学の「初級」くらいには行くのではないでしょうか。
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何とか初級くらいにはなりたいものです。

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