志賀内泰弘さんの小冊子「見えないものに価値がある」から紹介します。
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シーン・ボイスガイドを知っていますか。
目の不自由な人たちが映画を見るとき、その場面を説明する人のことです。
テレビドラマでも副音声で解説する番組があります。
でも、これはあくまで「解説」です。

これに対して、シーン・ボイスガイドは単なる情景の説明ではなく、
想像力に重きを置いていると言います。
説明しすぎると、かえって想像する楽しみがなくなってしまうというのです。

このシーン・ボイスガイドの存在は、よく通勤の途中で一緒になるMさんから教えてもらいました。
Mさんは目が不自由です。かといって、部屋に閉じこもっていたりしません。
月曜日に地下鉄で出会うと、「週末にどこどこへ行ってきました」という話題が次々と飛び出します。
「〇〇温泉のお湯はよかったですよ」とか、「バザーに協力してきました」とか、実にアクティブです。

また、知り合って間もない頃の話です。
Mさんが「昨日は友人の写真店に行ってきました」というのです。
一瞬耳を疑いました。
というよりも、戸惑ってしまいました。
目が見えないのです。
言うまでもなく、写真展は、目で鑑賞するものです。
返事に困った私は、「失礼ながらどうやって見るのですか」
と正直にたずねました。すると笑って答えてくれました。

もちろん見えません。でも、その写真をとった友人から、撮った時の様子を説明してもらうのです。
すると頭の中で想像が広がって、画面がパッと広がるのです。
物は目だけで見るものと信じていました。
それは、誰が見ても変わりません。
でも、想像力をもってすれば、何倍にも世界が広がるというのです。

大きな学びをいただきました。
そう、目に見えないものに価値がある。

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