致知出版社の人間力メルマガ から紹介します。
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便利な情報端末の普及などもあいまって、かねて指摘されてきた若者、
日本人の読書離れが一層進んでいます。
しかし、近年の脳科学の目覚ましい発達により読書の重要性が
改めて注目を集めはじめています。 

長年にわたり独自の国語教育を実践してきた土屋秀宇さんと、
読書が脳に与える驚くべき効果を実証してきた川島隆太さんのお二人に、
読書習慣を育むことの重要性についてお話し合いいただきました。

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本を読めば創造性も高まる

〈川島〉 脳科学的に見ても、読書を通じて語彙を
蓄えるというのはとても大事なことです。 

実験で一番驚いたのが、いわゆるクリエイティビティ、何か新しいものを
創り出す創造性は脳のどこから生まれてくるのかを調べたら、
語彙を格納する部位と言葉を扱う部位が一番よく働いていたんです。

それは言葉ではなく、イメージを膨らませて何かを生み出す時もそうなんですね。

 ですから、新しいものを創造する高次な活動も、すべて、その人の語彙が
もとになっているというのが実験を通じての僕の結論なんです。

〈土屋〉 湯川秀樹博士の「創造性の発現には相当大量の語彙の
蓄積が必要だ」との言葉に通じますね。

〈川島〉 きょうはせっかく土屋先生にお目にかかったので、
新しいデータをご紹介しますと、僕は最近、脳を鍛えることを
テーマに会社をつくりましてね。

そこへある企業から「ホワイトカラーの創造性を伸ばしてほしい」
というご依頼をいただいたんです。

言われたことしかできない社員さんを何とかしてほしいと。
そこで僕が何をしたかというと、文庫本を二冊渡しただけです。
これを一か月後までに読んでおいてくださいと。

一か月後に実験すると、ちゃんと読んでくれた社員さんは、
見事にクリエイティビティが上がっていました。

そのまま読書が習慣になって、課題の本以外にも読んできた人は
もっとその伸びが顕著でした。

しかし、さぼった社員さんは横ばいのままだったんです。 

ですから、本を読めばクリエイティビティが高まるというのは
既に証明済みなんですよ。

〈土屋〉 おおいに納得できるお話です。
ちなみに、その時はどんな本を提供されたのですか。

〈川島〉 何でもよかったんですけど、
その時は井上靖の本をお渡ししました。

クリエイティビティというのはまさに語彙力であり、
文章を読み、扱うところの脳から出てくるものですから、
まず読書してもらうことでクリエイティビティが高まるだろうと。

その上、普段使わない語彙が使われている少し古い本を読むとよりいい。

ただ、明治や大正の文語文はいまの若い人は読めないので、
口語に近い作品ということで井上靖を選んだんです。

(本記事は『致知』2019年9月号「読書尚友」より
一部抜粋したものです)

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