志賀内泰弘さんのブログ「ギブ&ギブメルマガ」から紹介します。
—————————–
『こんなうれしいことはない』

以前、県内でコンビニを経営していた栗原尚美さん(82)には、
忘れられない思い出があるという。二十五年前の出来事。

当時、店では万引きの常襲に悩まされていた。
防犯カメラの画像を見ると、高校生の様子。
ある日、栗原さん自ら客を装って店内で張り込んでいると、その少年が現れた。
彼の乗る自転車を確認すると、進学校として有名な高校のステッカーが貼ってある。

「なぜ、優秀な子が」とショックを受けた。
後でビデオを再生すると、実に巧妙に万引きをしている様子が写っていた。

翌日、その高校へ電話すると先生が飛んで来られた。
ビデオを見て「うちの一年生です」と。すぐに名前まで判明した。

翌日、少年は父親に伴われて謝りに来た。
当人の申告によれば、総額は一万円に及ぶという。
初犯ではない。何より計画的であることから、栗原さんは厳しくしかった。

父親から弁償の申し出があった。
だが、栗原さんは少年に向けてこう言って断った。

「今、そのお金を受け取ったら、この件はこれでおしまいになってしまう。
 私はお金が惜しくて学校へ通報したのではない。
 君は罪の意識がなくてしたのだろうが、悪の道への転落の
一歩を踏み出したことに気付いてほしい。
 弁償は将来、自分で汗して得た報酬で払ってもらおう」と。

月日が流れ、そんな話も記憶が薄れていたある日とのこと。
「三年前、ご迷惑をおかけしました。
僕、大学生になりました。
アルバイトをして初めてもらった給料です。
あの時のお金を支払わせてください」

そう言い、店に現れた青年は白い封筒を差し出した。
栗原さんは感激で涙をこらえるのが精いっぱい。

「約束を守ってくれてありがとう。
こんなうれしいことはない。
 そして入学おめでとう。これからも頑張って」
と言うと、「はい、失礼します」と笑顔で立ち去ったという。

<中日新聞掲載 2018年02月11日>
——————————-
栗原さんの思いが通じました。
この青年は過ちはもう起こさないでしょう。

20210308

校内連絡