致知出版社の「人間力メルマガ」から紹介します。

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町工場が挑むロケット打ち上げ開発

 北海道にある社員数20名の町工場「植松電機」。
 この小さな会社は2004年からロケットの打ち上げ開発に取り組み、現在、国内外の研究者が集まる宇宙開発の拠点になっています。
 この常識を超えたチャレンジの他、10代に向けて、夢を諦めず挑戦し続けることの大切さを伝え続ける植松努氏には、
2011年9月号の『致知』にご登場いただき、挑戦者としての原点を伺いました。

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「やったことのないことはやれないと思い込んでいるだけ」植松努(植松電機専務)
  『致知』2011年9月号
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 北海道に戻ってからは父が創業した植松電機に入り、電気機械修理の仕事を手伝うようになりました。
その後、リサイクルに使うマグネットの開発にも成功し、十年が経ちました。

このまま飛行機開発には戻らないのかなと思っていたのですが、そういう時に青年会議所の仲間とボランティアに行く機会がありました。
そこで児童虐待を受けていた子供たちに会って、その子たちが親に殺されるような目に遭っていながら、
なお親と暮らす日を夢見ていると知った時に、「どうして親は裏切ったのだろう。いくら寄付をしてもこの子たちを救うことはできない」
と自分の無力さを思い知ったんです。 

その時、思い出したのが僕自身の人生でした。
「強制したり暴力を振るったりして他人の可能性を奪おうとした人がたくさんいたな」と。 

そして、その背景にあったのが「どうせ無理だ」という言葉だと気づいたんです。
この言葉が連鎖して、可能性を奪われた人が今度は他人の可能性をも奪ってしまう。

 そしてその方向は自分よりも優しく弱い人に向かう。
それが児童虐待の大本だろう。 

だったら、この世から「どうせ無理」という言葉をなくさなきゃいかんと思いましたね。
これが僕の宇宙開発の原点なんです。

 その意味で宇宙開発は僕の手段です。
夢ではありません。 

僕はいま子供たちに宇宙開発を知ってもらうために全国の小中学校や本社工場で
ロケット教室を開いているのですが、昨年は一万人くらいの子供たちが二万機のモデルロケットを飛ばしました。

これは固形燃料に点火して時速二百キロで百メートルの高さまで飛ばし、最後はパラシュートで落ちてくるという本格的なものです。

二十人くらいしかいない会社だから教室を開くのも大変なんですが、そこで僕が自分の体験から話すのが
やったことのないことは、やれないと思い込んでいるだけ。ものづくりの基本は諦めずに続けること。
 諦めたりやめたりせずに考えるんだ。考えるのを決してやめちゃいけないよ」ということです。

僕の話を本当に理解できる子が増えたら、世の中はもっとよくなるのではないかと思います。

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