致知出版社のBOOKメルマガから紹介します。
その書籍は元フリーアナウンサーの和貝晴美さんによる音読用テキストブック
『1日1分、脳がシャキッと目覚める朝音読』です。
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コロナ関係のニュースが続き、気持ちが沈みがちな方も多いかもしれません。
そんな時、本書に収録された名文や名詩は、きっと今日を生きる活力を沸き立たせてくれることでしょう。

金子みすゞさんの詩や渡辺和子さんのベストセラー『置かれた場所で咲きなさい』など
古今東西の名文が、和貝さんの豊かな感性でセレクトされています。

さて、音読には具体的にどのような効果があるのでしょうか。
東京都健康長寿医療センター研究所・医学博士の藤原佳典先生が
寄せてくださった言葉をご紹介します。
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 音読が脳の活性化に役立つという説は、広く知られるようになりました。
光トポグラフィなどの装置を用いて、いろんな状況下で脳の酸素含有量や血流量を測定した結果、
黙読より、音読中のほうが脳は広範囲に活性化されることが実証されています。

 「黙読」の場合には、文字を視覚的に捉えることから始まります。
そして、脳の「感覚性言語野」にインプットし、文字として認識します。

次に、文字の示す言葉の意味を理解するために処理します。 

「音読」の場合にはさらに「運動性言語野」にアウトプットされ、音声に変換されます。
その音声は自分自身の耳から「聴覚野」にインプットされ、再び感覚性言語野で音声認識されます。

このように音読は「読む」「聞く」といったインプットと「話す」といった
アウトプットを繰り返し行う高度な知的活動なのです。

さらに、音読する文章は単に事実を述べるようなニュース記事ではなく
本書が紹介するような珠玉の名作を選ぶとよいでしょう。

そこには、視覚、聴覚だけではなく、嗅覚、味覚、触覚など五感を呼び起こし、
その場、その状況を想像させるような素材が鏤められています。

こうした作品を音読することで、さらに、脳の広範囲を活性化することが期待されます。

さらに、本書は朝の音読を推奨しています。
前日に入手した記憶情報は海馬に一時的に保管されますが、
睡眠中に大脳皮質へ運ばれて、一度リセットされます。

 そのため、朝目覚めた時の脳は新たな情報を収納する準備ができているので、
起床後、おおよそ三時間は、何か新しいことを始める際のゴールデンタイムといえます。

また、朝日を浴びることによって、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌のタイミングが
リセットされ、寝付きがよく、朝もスッキリ目覚めるように体内時計が調整されます。

 一方で、朝日を浴びると、心の健康を保ってくれるセロトニンという
神経伝達物質が脳内で分泌され、精神の安定を保ちます。

 さらに、高齢になると、口や舌の筋肉が弱まるため、咀嚼機能( 噛む力)や
嚥下機能(飲み込む力)が低下し、食べ物を誤嚥してしまうことがあります。

 また、ついつい食べにくいからと、肉など多様な食品を避けるようになり、
タンパク質はじめ栄養不足になり徐々にフレイル(=虚弱)に陥ってしまうことになります。

しっかり口を開けての音読は、滑舌の訓練にもなり、咀嚼・嚥下機能の維持にも役立ちます。 

東京都健康長寿医療センター研究所・医学博士    藤原佳典

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