志賀内泰弘さんのギブ&ギブメルマガ(現在は終了)から紹介します。

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ちょっといい話『おいしかったです!』志賀内泰弘

スターバックスに入るとレジのところで注文する際によく声掛けされます。
毎回違ったスタッフさんから、違ったことを言われます。
例えば・・・。
「夏らしいデザインですね(アロハシャツの椰子の柄を見て)」
「さっき、すごい雨でしたね」
「今日は混んでいてすみません」
「カバン重そうですね」

もちろん、
「こちら、新商品ですが、いかがですか」
と「商い」として勧められることもあります

でも、さりげなく、何でもないことを話し掛けられることが多く
これが何だか嬉しくてたまりません。
私は、寂しがり屋だからでしょうか。

 お金を払って、お客様として利用はしているけれど、
ごくごく短いコミニュケーションがあるだけで、
ホッとして幸せな気分になれるから不思議です。

でも、本当のことを言うと、知らない人と会話を交わすのは苦手。
「夏らしいデザインですね」と言われると、
嬉しいけれどどう答えていいか戸惑ってしまう自分がいます。
「あ、あ、ありがとう」と笑顔を作って答えます。

 さて、この夏の、お盆前の出来事です。
いつもの時間、スターバックスのいつもの席で本を読みふけっていると、
大きな声が店内にこだましてびっくり。その声の方を振り返りました。
「おいしかったです!ありがとうございます!!」
小学3年生くらいと思われる男の子とその母親がレジの方に向いていました。

気が付くと、「何事だろう」と店内のすべてのお客さんが、
母子の方に視線を向けました。それくらい大声だったのです。

でも、それは不快というわけではなく、清々しい。
元気のこもった弾むような声を「!」でしか表現できないのが悔しいです。

大人ではきっと恥ずかしくて、あんなに堂々とは言えないに違いない。

すると、もう一度、男の子が言いました。
「おいしかったです!ありがとうございます!!」
どうやら、先ほどとは別のスタッフに向かって言ったようです。
たぶん・・・母親が教えたのでしょう。

「帰る時、店員さんにお礼を言いなさい」と。
夏休み中のことでもあり、お母さんとしては「社会勉強」の意味もあったのでしょう。
それとも、母子の家庭では、ずっと前から習慣になっているでしょうか。 
ここで、ふと飲食店で働く友人から聞いた話を思い出しました。

「お客様が快適に過ごしてもらえるように頑張って働いているけれど、
 それでも至らなくてクレームが寄せられると凹むんだ。
 もう辞めたくなるなるほど、嫌になる。
でも、そんな時、お客様から『美味しかったよ』とか
『急いでたから、早く出してもらって助かった』とか言われると
『ああ〜この仕事をしていて良かった』ってまた元気を取り戻せるんだ」

 その話を聞いた当初、私もレストランや喫茶店に入ったら、
できるかぎり、「ごちそうさま」とか、「美味しかったです」
と口にするように心掛けていました。

たしかに、その時の相手の表情は、いかにも嬉しそうでした。
でも、時が経つにつれ、だんだんお座なりになり、
よほど格別に美味しかったり、特別な気遣いをされないと
言わなくなっていたことに気付きました。

いや、あの少年のおかげで、もう一度、「気付かされた」のです。
忘れていた「大切なもの」を思い出させてくれました。

たった一言で、働く人を元気にできたら、こんないいことはありません。
でも、ついつい「こちらはお客様で、お金を支払う立場だ。
サービスを受けて当たり前、お礼を言われるのはこちらの方だ」と
思ってしまう自分がいます。

 よく言います。
「どんなことでも、『してやる』のではなく
『させていただく』のだと思い、行動しなさい」

タクシーに乗っても、運転手さんに「近いのに、ありがとう」。
駅の改札で駅員さんに「ご苦労さま」。
そして、レストランで「おいしかった」です。

そんな簡単なことで、知らない人と小さなコミニュケーションをはかることができます。

「ありがとう」は、言われた側の人も、言った側の人も幸せになれる不思議な言葉です。

 スターバックスのあるスタッフさんに聞きました。
「やっぱり、美味しかったとか、ありがとう、って言われると嬉しいです。
コーヒーを売っているんじゃなく、何というか心というか、
快適な時間・空間を提供できたらって思っているので」

これからは、男の子を見習って、もっと胸を張って言いたいと思います。
「おいしかったです!ありがとうございます!!」

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