「バスのなかで」(坂村真民)

日本全国に建立されている詩碑「念ずれば花ひらく」をはじめ、
その生涯に1万篇以上の詩を書いたといわれる詩人・坂村真民氏。
そのうち『坂村真民一日一詩』から一つ紹介します。
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「バスのなかで」 

この地球は
一万年後
どうなるかわからない

いや明日
どうなるかわからない

そのような思いで
こみあうバスに乗っていると
一人の少女が
きれいな花を
自分よりも大事そうに
高々とさしあげて
乗り込んできた

その時、
わたしは思った

ああこれでよいのだ

たとい明日
この地球がどうなろうと
このような愛こそ
人の世の美しさなのだ

たとえ核戦争で
この地球が破壊されようと
そのぎりぎりの時まで
こうした愛を
失わずにゆこうと
涙ぐましいまで
清められるものを感じた

いい匂いを放つ
まっ白い花であった
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今、とても苦しくとも、
自分の周りにある美しさ、優しさに
気づけるような人でありたい。

そんなことを思います。