大切なのは「大丈夫」の一言(「子は親の鏡」シリーズ①)

大切なのは「大丈夫」の一言
             
 『悩んでいた母親が一瞬で救われた子育ての話』 平光雄より 

 日々、マスコミは不安を煽ります。マスコミの流す情報に浸ひたっている教室の子どもたちにも「夢」より「不安」のほうを語らせた方が容易に「盛り上がる」というのが現状です。
 もちろん、その子の性分にもよりますが、今の子どもたちはかつての子どもたちよりも、普段からたくさんの不安をもたされています。いずれも根拠のないものではないでしょう。 
 だからといって、まだ来ぬ将来にビクビクして、精神的に萎縮していては伸びるものも伸びません。家庭でも「不安」に立ち向かうための自信や勇気を育むことは、とても大切なことです。
 いずれ、子どもは家庭を離れ、一人で社会に出ていきます。
 独り立ちは不安でしょう。心細いでしょう。
 そのとき、一番頼りとなるものは何でしょうか。
 それは母親の「肉声」です。正確に言えば、内面化された「母親の肉声」です。
 武田鉄矢さんの海援隊のヒット曲『母に捧げるバラード』の歌の一節は、
  「今も聞こえるあのおふくろの声
    僕に人生を教えてくれた優しいおふくろ 
  <語り>
    コラッ 鉄矢」です。
 これは武田さんだけではないでしょう。多くの大人は、母親の「肉声」が聞こえているはずです。
 今、あなたが子どもに向かって話しているその「肉声」が、将来にわたって子どもの心の中で響くのです。
 ただし、それは特定の言葉というわけではありません。武田さんの言葉も、一度言われたことではなくて、いつも言われていたことの集約としての言葉と思っていいでしょう。
 数限りなく発された母親の言葉をトータルして、何と言っていたかが残るのです。
 特に、子どもの勇気、自信といった面を一生にわたって左右するのは、「大丈夫」という言葉だと思います。
 これは、言い方によって二通りに分かれます。
「大丈夫??」か「大丈夫。」かです。
 勇気、自信への影響という面に関して、母親の発する言葉は、このどちらかに集約されると言っていいでしょう。
 母親の気持ちとすれば、いつも「大丈夫??」と語尾を上げて聞きたくなるでしょう。心配のネタは事欠かないし、心情をそのまま吐露すれば語尾が上がるでしょう。しかし、これが曲者で、心の中で「大丈夫??」がずっと鳴り響くと、「慎重な人」にはなるかも知れませんが、自信のない、勇気のない人にもなっていくことでしょう。「一生モノ」の母親の肉声が不安を煽るのです。(中には「本当に大丈夫??」と重ねる人もいますね。不安は更に増すでしょう)。
 そうではなく、母親が肚を決め、たいていのことは「大丈夫」といつも言ってやることです。
 不安になった時、実際に挫折した時、ピンチになった時、皆から疎外された時……母親の「大丈夫」が響けばきっと大丈夫です。
 いつも、仮にやせ我慢でも「アンタは大丈夫」と言ってやる。条件無視でいいし、非論理的でもいいんです。「~だから」の理由もなくていい。
 「大丈夫」という母親の肉声は子に内面化されます。口癖にすれば尚更ですね。これは母親が肚を決めればできることです。
 もちろん、安易なことではないですが。
 しかし、不安はそのまま出さないと「決めて」「断つ」のです。
 子どもの将来のために。勇気と自信をもって歩んでいけるように。
 こうして「大丈夫」と、子どもを大きく包むには、母親にも、決断力や忍耐力や自制心などを培うための「修行」がいりますけどね。
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お母さん、肚(はら)は決まりましたか。